管理人の独り言−東海楽器の技術力−


 東海楽器の技術力について、今更私が云々するべきことではありませんが、同社のアコースティック・ギターを比較的多く所有している身としては、色々思うところがあります。
 Martin HD−28(’94)も所有していましたが、スキャロップ独特の胴鳴りと申しましょうか、良くいえば柔らかい、悪くいえば芯の無いサウンドがどうも好みに合わず、ハカランダの000−45モデルを入手する際に某オークションで手放したところです。
 東海楽器にもスキャロップはもちろんあり、私も数本所有しています。数えてみればCE−700S、CE−800S、CE−800M、CEV330OM、CE−500(000−45モデル)と約半数がスキャロップ・ブレーシングであります。
 東海楽器のスキャロップは、80年代のモデルはかなり小さめの削り込みであり、従ってサウンドもスタンダードなブレイシングのそれに近いものになっています。従って、これはスキャロップですよと注釈を入れないと、弾いていて判断しにくいモデルたちです。
 時代が下がって90年代に入り、巣山さんがチーフを務めるようになると、スキャロップの形状が独特のものになってきます。所謂「巣山ブレーシング」と呼ばれるようになっているのですが、独特の鳴りの良さがあります。
 スタンダードなブレイシング、スキャロップ・ブレーシング、またDサイズ、000サイズを弾いてきましたが、どれもキャッツアイに通じるサウンドを確立しているなぁ・・・と思っています。

 ところが今年になって、78年製のCE−800Mを入手したのですが、正直言って驚きました。入手当初はあまり鳴っていなかったのですが、何度か弦を張り替えるに連れて、本領を発揮し出しました。このモデルは、77年発表のリミテッド・プロダクションの一番下のモデルです。ソリッドマホガニー・バック、マホガニー・サイド、ソリッド・スプルース・シェイディッド・トップというのが主な仕様で、79年頃までがグローバー102Cペグを搭載しています。
 サウンドは、実のところMartinそのものです。比較的深いスキャロップを持ち、HD−28を彷彿とさせるサウンドを奏でます。私が好きでなかったサウンドなのですが、何故かこのモデルでは良く聞こえます。^^
 ブラインドで聞いても、また弾いてもロゴが隠れていれば東海楽器製と当てるのは困難だと思われます。

 東海楽器のアコースティック技術は、いわずと知れたMartin社との技術提携により進化を遂げます。
 しかし、かなりの本数弾いてみて、Martinそっくりというのには当たらず、いわば模倣技術だと思っていました。要は、Martin社は持てる技術の全てではなく、一部を移植したんだと思っていたわけです。

 ところが前述したCE−800Mでそれがひっくり返されたわけです。これはかなりの衝撃でした。
 数あるラインナップの中でリミテッド・エディションのこのモデルにだけMartinのサウンドを与えたわけですが、ここに東海楽器の誇りが見えるような気がします。「俺たちはMartinの音だって完璧に作れるぞ!」と・・・。
 77年のリミテッド・エディションの中で、このモデルはやはり特別な意味合いを持つモデルではなかったかと思います。

 以前私が聞いた話として、「75年のブランド創設前夜、試作品を作ったらMartinそっくりの音が出てしまい、NGとなった・・・。」というものでした。「そっくり」といってもNGになる程度似ていたとしても、Martinそのものの音が出ていたとは思っていなかったワケです。

 ここで考えられる東海楽器の技術力は、Martinの技術を完全に消化した上で、独自のアイデアを持って「Cat’s Eyes」を創造したということです。
 一般的に75年当時Martinの技術は模倣できないとされていました。多くの国産アコースティック・ギターのメーカーがその模倣を試み、数々のギターを生み出しましたが、Martinを凌駕したものは無かったと言えます。
 しかし、東海楽器はその当時からして完全にMartinの技術を吸収消化していたということであり、やはり驚きではあります。

 戦前から続くMartinの製造技術をほぼ完全に踏襲している東海楽器のアコースティック・ギター。その速やかな製造再開を願うものであります。

(2005/11/3)